映画「2001年宇宙の旅」のモノリスの正体とは
SF映画の古典的名作と言われているスタンリー・キューブリック監督の「2001年宇宙の旅」ですが、とにかくストーリーが難解で、映画を見ただけでは「なじゃこりゃ」と感じた方も少なくないと思います。
特に要所要所で出てくるあの謎の黒い石版=モノリスは、その正体についても映画ではまったく触れられていません。
この映画の小説版には、映画では触れていなかった細かな部分がかなり描かれていて、小説を読むと、わりとすっきり理解できたりします。
映画しか観たことなくてよく分からなかったという方のために、モノリスとはなんだったのか簡単に解説してみたいと思います。
なお、予備知識なしで映画や小説を楽しみたい方は閲覧をお控えください。
モノリスの正体とその目的とは
この映画の象徴ともいえるモノリスですが、その正体をざっくり言うと、「大昔に宇宙のどこかの知的生命体が、ある実験のために作った超高性能な機械」です。
その実験とは、「宇宙のあらゆる惑星にいる生命体の、精神(心)の発現を促す」という、とても壮大なものでした。
この実験を始めた種族は、宇宙で最初に知性を持った種族(ファーストボーン)と呼ばれています。
彼らは、宇宙のどこかの惑星で生まれて進化し、やがて科学技術を達成して宇宙に進出するようになると、自分たちと同じような知的生命体がいないか、あらゆる惑星を探し回る旅に出ます。
そして銀河中でさまざまな生態系と出会った結果、“精神以上に貴重なものはない”ということを見出し、精神の発現を促すための実験を始めたのです。
この実験のために膨大な数のモノリスが宇宙中にばら撒かれ、そのうちのいくつかが我々の太陽系に置かれたわけです。
モノリスの機能と役割
映画では主に3つの場面でモノリスが登場しますが、実は3つとも違うモノリスで、それぞれに応じた役割を持っていました。
1番最初のモノリスは、400万年前のアフリカ大陸に住んでいたヒトザルたちの前に現れました。
映画では、ヒトザルたちはモノリスを取り囲んで騒いでるシーンがあります。映画では詳しくは語られていませんが、実はこのときモノリスは、見えない力でヒトザルらの肉体の反応や潜在能力を調べていて、ヒトザルらが将来、知性や精神を獲得するに足る生物かどうかを分析していたのです。
そしてヒトザルという種族に可能性を見出したモノリスは、彼らの精神構造に干渉して知性の発現を促したのです。そうしてサルたちは道具(骨)を使うことを覚え、野生から文明への道へと歩み始めることになり、その進化の行き着く果てに私たち人類がいるというわけなのです。
第2のモノリスは、それから400万年後に月に到達するようになった人類が、月の探査をする過程で地中に埋まっているのを発見しました。
このモノリスを掘り起こしたところ、突如強烈な電波を宇宙へ向けて発信します。
後の調査で、電波が向かったちょうどその先に木星があることが分かり、それが、宇宙船ディスカバリー号が木星探査に向かうことにつながっていくのです。
さてこの2番目のモノリスは何のためにあるのかというと、
「どこかの種族に見つかったよ!、ここに知的生物がいるよ!」というメッセージをモノリスを作った存在に伝える役割を持っていました。
このモノリスは太陽光を浴びた瞬間に起動して、電波を発信するようセットされていました。地中に埋められていたというのも、いつかどこかの知的生命に発見されて掘り起こされることを願ってのものでした。
ところで、知的生命に見つけてもらうのが目的なら、なぜこのモノリスは地球ではなく、まったく生命に適さないような月面に置かれていたのでしょうか。
そこにもちゃんと理由があります。
ひとつの惑星で知性が芽生え、文明を築いて科学技術が発達すると、どの知性も遅かれ早かれ宇宙へと進出するでしょう。そうすると母星から最も近い天体を訪れるはずです。
モノリスは、1つの惑星の中でちょっとばかり知性を得た生物には眼中にないのです。
“宇宙へ進出し、別の星に到達できるほどの文明や知性を達成した”
その領域にまで達した種族に発見される事を願って、意図的に置かれた警報装置だったのです。
途方もない歳月をかけての実験ですね。
3番目に登場するモノリスは、木星近くの宇宙空間に設置されていました。
主人公が宇宙ポッドでモノリスに近づくと、突然サイケデリックで神秘的な映像が流れ始めます。流れ去ってゆく光の回廊、星の爆発、色の反転した世界、巨大な瞳・・・。そして最後はなぜかホテルに着くという不可解なシーンが続きます。
3番目のモノリスは「スターゲート」と呼ばれていて、いわゆる空間転送装置のような機能を持っていました。
スターゲートはボーマン船長をスペースポッドごと取り込み、宇宙のあらゆる世界に連れ回し、最終的にはモノリスの創造主たちのもとへと連れ去って行きます。
最終的に行き着いたホテルのような場所は、モノリスの創造主が地球人類の文化を模倣して作り出した「まぼろし」でした。
そこで、ボーマン船長の記憶や精神が洗い流され、人類の進化のさらに次のステージ、スターチャイルドへ進化するというシーンで映画が終わりを迎えます。